【完】淡い雪 キミと僕と
15.大輝『美麗は…とても可愛いな…』

15.大輝『美麗は…とても可愛いな…』




12月は慌ただしく過ぎていく。

新しい事業の仕事も忙しく、それに加え年明けから美麗と一緒に暮らすための物件探し。そしてクリスマスには、北海道旅行を控えている。

同棲や旅行の為に出来る限り仕事を終わらせておきたかった。

その為、夜中まで仕事をしている日も多くなり、美麗に会えない日も多々あった。けれども彼女は文句のひとつも言わずに「仕事なんだから仕方がないじゃない」といつも繰り返し言っていた。

仕事にも理解がある女。菫はあれからは何も言ってこないし、会社に訪問してくる事はなかった。

篠崎リゾートとの事業も順調に進んでいたかと思える。彼女の言う通り、仕事に私情は挟まない、と言った言葉は本当だったようで、篠崎社長とも良好な関係を築けていたかと、思う。

菫が企画担当をしているというお店、若い女性に人気のイタリアン店「ボヌール」がホテル内の飲食施設に入る、という事を聞かされたのはつい最近の事だ。

私用で会社に訪問へする事はなくなったが、これから事業の関係で会わなくてはいけない機会が増えるというのは、少々頭の痛い事案であった。

これもそれも、会長…祖父が絡んでいるようにしか見えないんだが…。

「ねぇ、久しぶりだよねッ」

とある12月の日曜日。

久しぶりに丸1日休みが取れたので、美麗と都内へ出てきた。

物件探しをとの事だったが、旅行の為の買い物もしたいと彼女は随分張り切っていた。


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