【完】淡い雪 キミと僕と

今すぐにでも一緒に暮らしたいくらいだったが、色々と準備があると言い、結局は1月からの入居になってしまった。

準備などないだろう、と言えばまたピーピーギャーギャー騒ぎそうなので、ここは何も言わないでおく。

それでも良い。俺は、ひとりで暮らしていたタワーマンションは近々解約する。

広いし、高い場所から人を見下ろせる所は気に入っていたが、どこか薄ら寒い空間だった。たとえ窓の外、東京タワーや高層ビルが見えなくとも、アンタと雪と暮らすのならば、その暮らしの中でもっと素敵な景色が見えそうだ。

けれど、美麗の暮らしていた犬小屋程小さなあのマンションに帰れなくなるのは少し寂しいな。

あそこは、俺結構気に入ってたぞ?広くも新しくもなかったが、俺と美麗と雪の始まりの場所だったから。



すんなりと部屋が決まり、昼にランチをした。

美麗がどうしても今日はラーメンを食べたい気分だといい、小汚いラーメン屋に入った。

港区で遊んでいた女の割には、欲のない女で呆れるほど俺にはお金を使わせない。

今回のマンションも最初はもっと高級な所に住もう、と言ったのだが、将来の為に節約出来る所はする、ときかなかった。

俺ほどの金持ちを前に何を言ってるのやら、と思ったが…。同時にきちんとしている女だとも思った。

そしてランチを終えた後、美麗の長い買い物に付き合わされる事になるのだ。

「ねぇー!この服可愛くない?」

「あぁ、可愛い可愛い」

「水色と白どっちがいい?」

「美麗ならどっちも似合う。どちらも買え」

「あ、絶対にちゃんと選んでないでしょう!?ムカつくーッ」



< 475 / 614 >

この作品をシェア

pagetop