【完】淡い雪 キミと僕と
黒いパンツスーツを着て、ヒールをカツカツと鳴らし背筋を伸ばす姿は、可愛らしいワンピースを着ているただお嬢様だとは思えなかった。
長い髪をゴムで1本にくくり、薄く化粧を施すが、それでも華やかさは何故か隠しきれていなかった。
完璧だ。完璧な人だとは思うよ…。
対等に仕事も出来る女性がパートナーだったら、そりゃあ円滑に物事は進んでいくだろう。…楽しい結婚生活を送れるかって言ったら、それはまた別の話になるが。
「すいません、僕はお弁当があるので…」
「大輝さんがお弁当?!」
可笑しそうに口元を抑え、笑いだす。…まぁイメージには合わんと思うが、美麗が作ってくれた初めての手作り弁当。俺はとても嬉しかった。
「えぇ、話し合いと言っても僕に出来る事は大してありませんよ。お店をどんな風にするかは菫さんの仕事ですし、僕が考えるのはどこに出店して、いかに売り上げを伸ばすか考えるくらいですし」
「あら、そんな事ありませんよ。大輝さんのホテルに出すんですもの、大輝さんの意見も沢山取り入れたいわ。
ボヌールはね、昨年六本木にも出しているの。可愛らしいお店だから若い女性にもとても好評なんです。けれど、レジャー施設になれば、もっとターゲットは家族寄りにしないといけませんし」
「それはそれは、不思議の国のアリスがコンセプトでしたっけ?一度は拝見してみたいものですね」
「そうね、わたしも大輝さんに一度見て貰いたいと思ってたの。
ランチが駄目ならば、夜にディナーでもどうですか?あくまでも仕事の上での話です。
自分のホテルに出店するお店ならば、自分が1番知っておかなければいけない事ですよ」