【完】淡い雪 キミと僕と
「菫さんとの仕事は、祖父から任された事で…今度うちのホテルに菫さんが担当するお店も入る事になって…
食事とは言っても、仕事の話し合いなだけだったんだ。美麗が思っているような事は何ひとつない…。それに隠していた訳ではないんだ。
美麗に余計な誤解を与えたくなかった…。仕事とはいえ、菫さんに会うのは良い気がしないだろう…?
でも黙っていた事が美麗を余計傷つけたのならば、それは謝る。ごめん…。本当にごめん…。だから機嫌を直してくれ」
いつもは極悪非道な男の、項垂れる姿。
彼の言う通り、それは仕事上の関係であったろう。それ以上に何があるかなんて、思ったりはしていない。
ただただ黙っていられた事が悲しくて、西城さんは断ったとはいえ、元婚約者だった人だ。それにあんな素敵な人。もしかしたら心変わりしてしまうかもしれない。それ位に、自分に自信がなかった。
これじゃあただの我儘女だ。
「美麗…、ボヌール行ってたんだな…」
ぼそりと吐いた、彼の言葉にドクンと心臓が高鳴る。
西城さんの事を言えた事か…。わたしだって、今日彼に内緒で佐久間さんと食事をした。 行くべきではなかったのだ。 人の事を言えない。
そしてわたしは、彼ほど上手に嘘をつけるタイプではなかった。
「誰と行った?後輩の千田ちゃんとかいう女か…?」
「そう、ね…」