【完】淡い雪 キミと僕と
歯切れの悪い言葉だったと思う。視線も左右を泳ぎ、定まらないのは分かっていた。
そしてわたしのそんな様子に気づかない程、彼は鈍感な男ではなかった。 こっちから喧嘩をふっかけた癖に、自分にだってやましい事があるから、こんな態度になってしまったのだ。
それを見抜かない彼ではない。 彼は放り出されていた鞄を漁りだし、携帯を取り出す。 それを慌てて止めようとするが、勝手にパスコードを解除し、ラインの画面を開いてしまった。
佐久間さんとのラインは都度消すようにはしていた。やましい事は何ひとつ無いが、用心にこした事はない。
けれど、今日は菫さんとの事もあって、混乱していた。先ほど着ていたラインは放置したままだった。
「ちょっと…!」
画面を凝視する彼の動きがぴたりと止まる。
その顔色は怒りに染まっていくのが、分かる。こちらを睨みつけ、佐久間さんとのライン画面を見せつけた。
「これは、どういう事だ?ボヌールに食事に行ったというのがおかしいと思ったんだ。
何故佐久間という男と連絡を取っている。そして何故仲良くランチなんかしている。
しかもこの内容はなんだ?!西城さんと別れたら連絡ちょーだいね?だァ?!
お前、ふざけてんのかッ?!」
叩きつけるように、床に携帯が投げられた。
そして、彼が上着を手に取って、家から出て行こうとしたのが分かったので、慌てて追いかける。