【完】淡い雪 キミと僕と
2日目。電話が何度も掛かってきたが、一切出なかった。
謝罪のメッセージも何度も届いたが、ひたすらに無視を決め込んだ。その辺りでほんの少し冷静になって、携帯ショップに行って美麗の新しい携帯を購入した。なんせ喧嘩の時に床に叩きつけてしまった。
メッセージや電話は届いていたが、液晶はバキバキに割れているに違いない。
そして少し冷静になって、今頃美麗は毎日泣いているんじゃないかと考え始める。
…それに美麗は何もなく男にのこのこ付いていく様な女ではない。
…あの佐久間とかいう男に脅されたに違いない。また沸々とあの男に怒りが沸いてきた。人の女に勝手に手を出しやがって。
そして、3日目。クリスマスイブ当日。
いつも通り朝から美麗を迎えに行った。旅行をキャンセルする気は更々無かった。けれど、たった3日で機嫌が直る程心の優しい男ではなかった。
玄関の扉を開けた美麗は今にも泣きだしそうな顔をしていて、真っ赤な目を腫らしていた。…それでもまだ意地悪はし足りなかった。
こちらのご機嫌を取るように何やら話を始める美麗をずっと無視していた。そうしたらいずれ彼女は話をしなくなり、シュンと顔を下に向けた。
ずきりと胸が痛んだ。けれど、素直になれない自分がまだどこかにいた。
雪を山岡家へ預け、空港へ向かう途中の車内もずっと無言。陰湿な空気ばかりが流れるだけだった。
羽田に着き、飛行機に乗った後も彼女は何かと俺に話を掛けた。
「飛行機に乗るの久しぶりッ」
「ねぇ、見てすごい眺めだよ?」