【完】淡い雪 キミと僕と
17.美麗『わたしも出来る事ならばあなたの力になりたいの。』

17.美麗『わたしも出来る事ならばあなたの力になりたいの。』




とても幸せなクリスマスを過ごせた。一時はどうなるかと思った。

菫さんとの事で喧嘩をして、佐久間さんに会ったのがバレた。あんなに怒る姿は初めて見たかもしれない。彼は全く話も聞いてくれず家を出て、そして3日間連絡を無視し続けた。

終わったと思った。

だからクリスマス当日、まさか迎えに来てくれるとは思わなかった。

それだけですごく嬉しかったけれど、羽田に向かう途中も、飛行機に乗っている間も、彼はわたしを無視し続けた。何を話しかけても応えず、背中を向ける。

段々と悲しい気持ちでいっぱいになっていて、気が付けば北海道に着いた瞬間に泣きだしてしまった…。

わたしはそれだけ西城さんを傷つける事をしてしまったのだと、あんな軽はずみに佐久間さんと会うんじゃなかったと何度も後悔した。

別れてしまうかも、とも思った。けれど、西城さんは別れる気はないとハッキリと言ってくれた。

もう、わたしも駄目かもしれない。いつの間にこんなに彼の事を好きになってしまったんだろう。…わたしの方こそ、きっと彼がいなくなったら駄目になってしまう。

「朝風呂というのも実に気持ち良いものだ」

客室に取り付けられている温泉からは、檜の良い香りがする。けれど、晴れ。太陽が昇る空から、ゆっくりと小さな雪が降り注ぐ。

晴れているのに雪が降るなんて、東京生まれ東京育ちのわたしにとってみれば不思議な光景だ。

そして、空気はとても美味しい。同じ日本とは思えない程空気が澄んでいて、空気中の光りがキラキラと光っている。

西城さんの体にもたれ、そのロマンチックな光景に見惚れていた。


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