【完】淡い雪 キミと僕と
「勿論、大輝くんがそう言うのならばこちらはいつでも大歓迎ですよ。
お父様やおじい様ときちんと話し合っていらっしゃいな。」
「ありがとうございます…。また、いつか…」
従業員が揃って笑顔で迎えてくれて、そして来た時と同じ笑顔で送ってくれた。大きなホテルではなかったけれど、とても素敵な旅館だったと、わたしも思う。
至れり尽くせりで夢かぐらを出て、旭山動物園までスタッフは送ってくれた。
その車内で彼は、子供のような顔をして、色々な話をしてくれた。それも、また嬉しかった。
「てっきり西門さんかと思ってばかりいた」
「小さかった頃の話?」
「あぁ、何故人はホテルに泊まるのか、幼いながらの小さな疑問をぶつけた時、素敵な言葉をくれたのは、てっきり西門さんかと。
そう記憶していた筈なのに、あれがまさか父だとは思わなかった。あの人はただただ西城グループに生まれて、好きでもない仕事をしているかと思っていたんだ。
だからこの仕事に強い拘りはない人だと思っていた…。」
「けれど、お父さんだってきちんと考えていた?」
「…西門さんの話を聞く限りはな…。
そう考えてみたら、俺は父とは共に仕事をして、父の仕事を習ってはきたんだけど、そういった話を改めてした事がなかった…。
きちんと向き合って話はしていなかったんだと思う。それは母にも言える事だけどな。
俺だって好きでホテル業界の息子に生まれた訳ではない。それは逃れられない運命だと思っていた…。そうやって子供みたいに拗ねて、自分がしている仕事の大切さなんて考えた事もなかった…」
「そっか…。そうね、きちんと話し合う事は大切な事なのだと思うわ」