【完】淡い雪 キミと僕と
ペンギン館の中に入ると、アーチ状になっている通路の中では、青々とした水の中ペンギンたちが涼しい顔をして頭上を華麗に泳ぎぬけて行った。
まるで飛んでいるように羽根を大きく拡げている。
「ねぇ見て、可愛い。一緒に泳いでる」
「下から見ると圧巻だな。成る程、トンネルのような造りにしてよりリアルに近く見れるって訳か。
これは人気なのが理解る」
「ペンギンのお散歩は午後の部と午前の部で分かれているみたい。
時間になったらまた来ましょう。後はホッキョクグマとあざらしも見たいの」
「俺は…ミミズクが見たいぞ」
「何よ、ミミズクって」
「フクロウの一種だ。いつか言ったろう。アンタによく似ていると。目がぎょろぎょろしてて、これがまた可愛いんだ」
「もぉーッ可愛いなんて」
木の上にまたがり、全く動きを見せる事のなかったミミズクは、大きな瞳を真っ直ぐと空へと向けていた。
…可愛いの?コレ…。
けれど、西城さんは満足気にこちらを向き「なぁ似ているだろう?」と何故か得意げだ。いや、これに似ていると言われるのは微妙よ…。レッサーパンダとか可愛い物に似ていると言うのならばともかく。
腕を組み満足気にミミズクに向かい「美麗、美麗」とわたしの名を呼ぶ。けれどミミズクは西城さんには一切見向きもせずに空を仰いでいた。
ホッキョクグマのもぐもぐタイムはとても可愛らしかったし、あざらしが下から上へ優雅に泳ぐ円柱水槽と迫力があった。
寒い寒いと文句を言っていた西城さんも歩き回るうちに温かくなってきたのか、頬を赤らめてはいたものの、子供のように檻の中にいる動物に夢中になっていた。