【完】淡い雪 キミと僕と
猛獣館の前でぴたりと足を止める。
百獣の王と呼ばれるライオンが、人間たちに鋭い視線を送りながらしなりしなりとゆっくり歩く。
他にもトラやヒョウなんかも居た。熱帯地方に生きる動物だ。この寒さは応えるのではないのか。どうやら表舞台に出るのは順番らしい。
そうよね、たとえ百獣の王と言えど寒い時は寒いわよね。
隣にいる西城さんは、恐らくわたしと同じ事を考えているように思える。
「ねぇ、ヒョウって雪に似てるわね」
「まぁ同じ猫科ではあるからな。遠い祖先は近しいもんがあるのだろう。
雪の方が全然貫禄があるがな」
そうか?!
あの弱々しく愛らしい雪。
けれど、あんな可愛らしくあっても奴らと同じ猫科。獲物を狙う時の鋭い視線は、よく似ていた。
「わたし、お土産屋さんでぬいぐるみ買おうッと」
「ふん、雪に似てるからか」
「猛獣だけど、雪に似ていると可愛く見えるから不思議ね」
「それは同感だ」
腕組みをして、満足そうに西城さんが答える。
その後は動物園に併設されている食堂で北海道の本場ラーメンを食べて、お土産屋さんに行って、沢山のお土産を購入した。
まるで子供だな、とお土産をあれもこれも買いあさるわたしを見て、彼は皮肉めいた言葉を放つ。…けれど、知っているのよ。アンタも雪に似たヒョウのキーホルダーをこそこそと購入していた事は。
全く素直じゃないんだから。そんな風に過ごしているうちに時間はあっという間に過ぎて行って、飛行機の時間が近づいて慌ただしく空港へ向かう。