【完】淡い雪 キミと僕と
「やはり、美麗は優しいな…」
「何がよ。それよりアンタ、夢かぐらで働くの?」
「あぁ、さっきの話か。父にも相談してみようと思う。働くというよりかは、修行というか…。
俺、よく考えたら現場の事は全く分かっちゃいないんだ。机の上でのお勉強は沢山してきたのだが、父や祖父は俺へ現場に出ろと一切言った事がない。
そのまま経営のトップに立つのは、怖くある。…そう思えば、西門さんの所では勉強になる事が沢山ある気がしてな。だから父に話して、1か月程度彼の下で働きたいと思ったんだ。
まぁ、許されるかは知らんが…」
「そう…、1か月も…」
それって出張って事よね?1か月とは言えど、あなたに会えないのは、とても寂しいわ。きっとそれが顔に出ていたんだとは、思う。
ニヤケながら、彼が顔を覗きこむものだから。
「なんだ?美麗、俺に会えないのは寂しいか?」
「別にッ!誰がよッ」
「俺が出張になったとしても、それにうつつを抜かし他の男と会わないように」
「そんな事…、もうしないわよ」
それはもう、今回の件でこりごりだった。彼の機嫌を損ねると、どこまでもズルズルと引きずられそうだった。 あんな想いをするのは、もうわたしだって嫌だもの。
「それにアンタだって…。
仕事でならば会うのは仕方がないけれど、食事に行くと言うのならば嘘をつかないでわたしに言って…。
嫉妬はしちゃうけれど、きちんと話してくれるなら納得は出来るから…」
振り絞って言った言葉に彼の眼差しはとても優しくって、頭を数回軽く撫でた。