【完】淡い雪 キミと僕と
ベッドの上、裸のまま彼女は可笑しそうに宙に携帯を掲げて、見た事もない自分のファンを楽しそうに罵る。
シーツの先から出た脚には無駄な肉は一切なくて、白く透き通るように美しい。 壊れそうなくらい華奢なのに、胸だけはやたらとデカくて、そりゃあ傍から見れば選ばれし女と勘違いするのも分からなくもないんだけど。
噂では、全身整形だとか。過去の画像はネットの海に消えぬまま漂っている。
でも彼女はあくまでも、メディアではノー整形で貫き通している。真相は闇の中だ。
「そういえば」
ベッドの脇で座り込んで煙草を咥えている俺の方へ近寄ってきて、後ろから抱きしめたかと思えば、咥えた煙草を奪い取る。
美味しそうにそれを吸い込んで、背中にキスを落とす。
「あたしの友達の美麗って覚えている?」
リアルタイムで猫を預かってもらってます。
なんて言ったら恐らくこの女は発狂して問い詰めるだろう。興味はない、と決め込みながらも、こういった類の女はゴシップ好きなのだ。
一瞬首を傾げて、知らんぷりを通すに限る。
「誰だっけ?」
「えーひっどーい!忘れるとかありえんわぁー。
結構前のパーティーで頼み込まれて大輝くんを紹介したじゃない。
ほら、受付嬢してて、茶色の髪をこぉ~くるくるっと巻いて、よくいる量産系の女」
酷いと言いつつ友理奈は実に楽しそうに話す。煙草の煙をくゆらせながら、身振り手振りで、美麗の特徴を伝えてくる。
’量産系’って、俺にとって見れば友理奈も十分量産系の馬鹿女なのだが。
話半分で聞きつつ「あぁ、あの子」とさも今思い出したように言う。すると友理奈は「ひど」とまた楽しそうにけらけらと笑った。