【完】淡い雪 キミと僕と

「それは俺も悪いと思っている。
仕事であろうとこれからは菫さんとの会食などは余程の事がない限り断ろうと思う。
だから信じて欲しい。俺が好きなのは、これから先美麗だけなのだから」

頭を撫でる手はとても温かかった。 だから彼を信じられる気がする。

わたしも行動を慎もう。何かあったとしたのならば、それは1番に西城さんに相談すべきだったのだ。自分ひとりで解決しないよう。

佐久間さんの件も、まず初めに彼に相談すべきだった。そうだとしたらこんなにこじれはしなかっただろう。



けれど、まさかこの旅行で彼がホテル業界の事を1から学びたい等と言うとは想像もつかなかった。そこまで仕事に対して熱量があるようには思えなかったし、トップならばトップらしく机の上の仕事をこなしていればいいとも思った。

でも、違った。自分の足で歩き、自分の目で現場を見る事は、これからトップに立つ人にとって大切な事かもしれない。

夢かぐらの従業員は皆とてもキラキラとしていた。自分の仕事に誇りを持っていた。
そんなわたしにも小さな夢が芽生え始めてきた。

「西城さん、わたしは特にこれと言って何も出来ない女よ」

その言葉に目を丸くし、眉をしかめながら口を一文字で結ぶ。



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