【完】淡い雪 キミと僕と
「美麗は道具ではありません。それに僕は…会社の為に結婚をする訳ではない」
木で出来た茶色の机の上に散らばった資料。
彼はそれを右手に取ると、思いっきり叩きつけた。
「お前は自分の立場が分かっていない!
それに、何だ?この女はッ。過去には六本木界隈で遊び回っているときた。
かなり有名企業の社長とも会い、愛人紛いの事をしている女ではないか。そんな女は西城家には相応しくない。
お前だってこの娘に遊ばれているだけなのではないか?!」
何度も机をバンバンと叩きつける。そんな祖父の手を払いのけると、資料がゆっくりと床へ散らばって行った。
「これ以上彼女を侮辱するような言葉を吐くのならば、絶対に許さない!」
祖父の鋭い視線とぶつかり合う。
ぶつかり合って改めて気づかされた。…やはりこの人は俺に似ているんだと。
同じような鋭い瞳で見つめ合うと、それは自分を見ているようでげんなりとする。
「話にならん…」
「話にならないのはこちらの台詞です。
僕はあなたの言う事は聞くつもりはありません。失礼させて頂きます。これ以上あなたといるとぶん殴ってしまいそうだ…」
踵を返し、会長室を出ようとすると「絶対に認めないぞ…」と威圧とも取れる彼のどすの効いた声が響く。それさえも無視をして、会長室を後にした。