【完】淡い雪 キミと僕と
美麗に知られてはいけない。これだけは絶対に。
美麗の事だから、祖父にこんな事を思われているなんて知ればきっと深く傷つく事だろう。誰でもなく、港区で遊んでいた事を気にしているのは彼女自身ではないか。
それどころか、祖父が俺たちの交際を反対しているなんて知ったら、自ずと身を引いてしまうに違いない。それ程心が弱い女なのだ。誰よりも俺と釣り合う人間かを気にしているのも彼女自身であるのだから。
別れるなんて選択肢は、ない。それに他者からの評価によって、君が陰で涙を落とす事なんて絶対に許さない。
「おかえりなさーい」
仕事を終えると、新しい新居で美麗と雪が出迎えてくれた。
ピンク色のエプロンをつけた美麗が可愛くて仕方がない。そして、隣に並ぶ雪は…体格ががっしりとしてきた…と思う…。
「ただいま」
にゃあーと言う声ももう子猫の可愛らしいものでは、ない…。
雄猫にしては声が可愛らしいですねぇーと獣医は言ったが…段々と野太くなているのは気のせいか…。雪を両手で持ち上げると、ずっしりと重量感がある。
それでも愛らしさは何ひとつ変わらない。抱かれて、嬉しそうに俺の顔を舐めるとすりすりと顔をすり寄せた。
「なぁ…絶対に雪太ったよな…?」
「え?そう…?でも雄猫だからね。それに大きくなることは良い事じゃない。
それより今日は炒飯だから、早くご飯食べましょう。時間があったから餃子も作ったのよ」
「それは嬉しい。今着替える」
「雪も良い子で待ってたからご褒美にちゅーるあげるねぇ~!」