【完】淡い雪 キミと僕と

美麗が’ちゅーる’と言う言葉を発すると、大慌てで雪が俺の腕からすり抜けて行った。

なぁ~おん~、と切なげに鳴いて、美麗の足の周りをすり寄っている。

…だからそれが太る原因なのでは…?夜ご飯は先に済ませていたと見るぞ?

それでも美麗の手からちゅーるを貰う雪は可愛らしいので、何も言わないでおこう。




同棲は実に楽しいものだった。タワーマンションから引っ越したのは、何ら変哲もない2LDKの普通のマンションだった。

それでも美麗は’夢のよう’と随分このマンションが気に入ったようだ。犬小屋が牛小屋にグレードアップしたようなもんか。

それでも美麗が満足ならば、俺も満足ではある。中々収納も多いのがお気に入りのポイントで、けれど俺と美麗の洋服などを詰めると、ウォークインクローゼットはパンパンだった。…美麗の物が多すぎるのだ。

よって、寝室の他のもうひとつの部屋は物置と化した。物置兼雪の遊び場か。

ネットで注文したキャットタワーも設置した。言っておくが、井上晴人の家にあった琴音猫のキャットタワーより豪勢だ。

白と茶色のお洒落な造りでインテリアとしても映える。けれど美麗がこれを見た時は「何でこんなデカいのよ」とクレームをつけた。

どうやら多頭飼い用のキャットタワーだろうが、ふたつくっついているキャットタワーは橋があり、左右に行き来が出来る。

小さな小屋も完備しており、途中では雪が喜びそうな玩具も設置されている。これを琴音猫が見たら羨ましがるに決まっている。

雪には相応しいキャットタワーだ。若干リビングの幅を取ってる気もせんが…。それは良かろう。



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