【完】淡い雪 キミと僕と

「えぇ、初めて会った時から雰囲気が似ているなぁと僕は思ってましたよ。
ふわりとしてるのに芯が強そうな所とか。
もしかして佐久間さんが好きなのは美麗ではなくって、菫さんなんじゃないですか?
だってずっと一緒にいた幼馴染なんでしょう?」

菫の瞳が左右に動く。 珈琲カップの柄を持つ指は微かに震える。 かなり動揺している。別に確信をついた話ではないが、ただの戯言のつもりだったんだが…。

「潤に限ってそんな事はありません…。わたしたちはただの幼馴染だし…。」

「僕は幼馴染っていた経験がないから分からないんですけどね。
でも幼い頃からずっと一緒にいて互いの成長を見守ってきたのなら、恋のひとつやふたつ芽生えてもおかしくはなさそうだ」

「止めてくださいよ!」

少し、怒り口調だった。心外だ、とでも言わんばかりに。

乱暴にカップを置いた菫は、まるで少女のような顔をしてバツが悪そうに下を向く。

「あんな奴…何とも思ってないんだから…。
だって大輝さん聞いて下さいよッ。わたしフルートやってたって言ったじゃないですか?
潤もピアノやってたんですよ。昔は一緒に仲良くしてたのに、いつの間にか辞めちゃって…
自分の会社なんか継がないって、自分は自分のブランドを立ち上げるんだって、勝手に先に進んでいっちゃって…」

愚痴のようにも思えたが、寂しいんだという想いは十分に伝わる。

「それにわたし、チビって嫌いだし」

「そんなに小さかったですか?」

「わたしは見上げるような大きい人が好きなんですッ。大輝さんのような。
それに潤は女の子みたいな顔をして…その癖大人になって女性と付き合うようになったらいっちょ前に男の顔も見せるようになってッ」


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