【完】淡い雪 キミと僕と
18.美麗『わたしが、誰よりも彼を幸せに出来ます。』
18.美麗『わたしが、誰よりも彼を幸せに出来ます。』
彼のお家に誘われるなんて夢にも思わなかった。
西城さんの口からしか、彼の両親の話は勿論聞いた事はない。
自分に無関心な父親と、幼き頃自分を虐待した母親。 どんな顔をして会えばいいのだろう…。
と、いうかどんな家なんだろう。西城さんが以前住んでいたタワーマンションだって衝撃だったけれど、それ以上の物だろう。…ドキドキしてきた。
「あ、山岡さん。佐久間さんですよッ」
「ゲッ…。わたしちょっと事業部に行ってくるッ」
遠目からでも分かる派手な服装。逃げようとしたけれど、’美麗ちゃーん!’と大きな声で呼ばれる。
ちょ、ロビーにいる人が振り返ってこちらを見ているじゃないか。声がデカい。今日もストライプの派手なジャケットを着ている。
「こんにちはー、美麗ちゃん、千田さん」
こんなちゃらい雰囲気だけど、千田ちゃんの名前まで覚えているのはさすがだ。
千田ちゃんはいつも通りの微笑みを落とし、こんにちはと挨拶した。佐久間さんはコラボティシャツの打ち合わせでちょくちょく会社にやって来る。
「お久しぶりです。今日も素敵なジャケットですね」
「でしょ?!さっすがー千田さん。これね今期の新作なのー。お気に入りなんだー。変だーって言われたりもするけど俺は気に入ってるんだ」
「とてもお似合いですよ。コラボティシャツは順調ですか?」
「えぇ、お陰様で。
完成したら千田さんと美麗ちゃんにもプレゼントするね」
「キャー!いいんですか?嬉しいですッ」