【完】淡い雪 キミと僕と

コミュ力の高い子だ。千田ちゃんは佐久間さんに全く物怖じせずにフランクに話を掛けている。さすがだ、としか言いようがない。

彼女にとっては大企業のお坊ちゃまだろうと、一般人だろうと関係はないのだ。

わたしは出来るだけ気配を消して、空気になる事に徹した。それもまた無駄な抵抗なのだろうが…。

「何美麗ちゃん固まってるの…?」

にこりと微笑む。 余計な事は言わないに限る。

「早瀬さんにはお次しましたので、どうぞ」

「もぉー、相変わらずつれないんだからー。いつの間にかラインから消えちゃうしさぁ」

「携帯は壊れたんです」

「じゃあ新しく教えてよ」

「あ、わたし達そろそろ昼休憩なので失礼させて頂きます。ではでは」

逃げるように佐久間さんとの話を切り上げる。彼は唇を尖らせて悪戯な顔をしたまま、社内へ入って行った。

「良い人ですよね」

「まぁ……悪い人では…。それより休憩入りましょう。今ので一気に疲れたわ」

「あ、わたし今日は彼が近くに来ているので」

頬を少しだけ赤らめ千田ちゃんははにかんだ。彼とは、雪村さんの事だろう。

「あら仲良しね。羨ましいわ」

「山岡さんだって彼氏と同棲始めたんでしょー?!羨ましいですよ。」

嬉しそうに社内を出ていく千田ちゃんの後ろ姿を見送った。

ひとり寂しく休憩室に行く。最近は西城さんにお弁当を作っている。全然下手糞だけど、彼が喜んでくれるから、時間がある時は作っている。

そのついでに自分のお弁当も作るようになった。


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