【完】淡い雪 キミと僕と

逆に彼女の琴子さんは料理が余り得意ではなかったようだが、最近は井上さんの影響もあり料理をし出したらしい。しかも結構上手いそうだ。わたしはちっとも料理が上手になる気配がなかった。

それでも西城さんはわたしの作る物を美味しいと言って、お弁当だって喜んで会社に持っていき、帰って来てからお弁当箱を洗うとそれは綺麗に空になっていた。

…得意ではないけれど自分の好きな人が喜んでくれるのは嬉しかった。

「もしかして西城さんに作ってるとか?」

先月、彼と付き合ってる事を井上さんと琴子さんに報告したばかり。

でもこうやって改まり面と向かって話すのはあれ以来だ。

いつものように井上さんは柔らかい笑みを浮かべ、きつね色をした油揚げの乗ったうどんをすする。

「うん、そうなの。こんなへたっぴなのに喜んでくれるの。だからまぁ…下手なりに頑張ってるの」

「そりゃあ西城さんも幸せ者だぁ。琴子も言ってたよ。’大輝は一途だし、ひとりの女を幸せに出来るの’って」

それは少し切ない。なんていっても、西城さんは元々琴子さんの事が大好きだったんですもの。

もしーも…琴子さんが西城さんの気持ちに応えていたとしたら、現在はどうなっていたんだろう…。わたしはもう今となっては彼のいない未来を想像出来ないんだけど。

わたしと琴子さんはタイプが全く違う。だから何故彼がわたしを好きになってくれたかは未だ不明。

でもそれを言ってしまえば井上さんと西城さんだって偉くタイプが違う。人を好きになるのなんて理屈では説明出来ないんだろう。



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