【完】淡い雪 キミと僕と

――――
―――――


『今日は晴れていますね(*'▽')
晴れていると、気分が良く仕事が出来そう( *´艸`)』

『今日は珍しく残業。ちょっとミスをしてしまって…。自分がした事だからしようがないけど落ち込んでいます(..)
西城さんはお忙しいですか?
お仕事頑張ってください!』



欠伸が出そうな程、退屈な内容だったと思う。

それでも女性には優しく。そんな下らない内容にもマメに返信を返していた。

パーティーで会った時余りにも必死だったもんだから、連絡先は交換した。そして下らないメールのやり取りが始まって、直ぐに後悔した。

山岡美麗という女は、下手に手を出したらいけないタイプだと、頭の中で警告音が鳴った。

彼女は恐らく、真面目な人間なのだ。

港区で遊んでいるけれど、どこか普通の感覚を持ち合わせているタイプで、育ちもきっと悪くはない。愛されて育った典型的な人間。

そこが最も俺が苦手とする所以のひとつでもある。

お金持ちな男との玉の輿婚。優雅な生活。上昇志向であるのには間違いはないのだが、遊びで男と付き合うタイプには到底見えなかった。

美味しい高級料理。素敵なブランドバック。ある程度は男に貢いでもらっていたかもしれない。けれど、友理奈のように金では全てを割り切れないタイプ。

身体は簡単に明け渡さない。



だから非常に厄介だというのだ。

遊び慣れている女だとしたのならば、それが一夜だと割り切れる女ならば、一度くらい抱いてやっても良かった。

でも彼女はきっと違う。

軽々しく手を出してしまえば、きっと傷つく。あのバレバレな張り付けられた花のような笑顔の先の、崩れ落ちそうな涙は、何故か見たくなかった。

だからハッキリと告げたのだ。


< 56 / 614 >

この作品をシェア

pagetop