【完】淡い雪 キミと僕と

「熱のような物ですよ。恋なんて…。
美麗さんもこの先色々な男性と会って、大輝より良い人などいっぱいいらっしゃるでしょう。
あなたほどの才色兼備な方ならなおさら、大輝なんかに拘る必要もないと思います。
これは私の気持ちです。」

そう言って、先ほどの茶色い封筒をずいっと差し出した。

中身を確認して、開いた口が塞がらない。

そこには帯で巻かれた1万円の札束がふたつ。 計200万円。…所謂手切れ金という奴だろう。

ドラマでは見た事があったが、実際自分の身に降り注ぐとは思っていなかった。

「こんな物ッ!頂けません!」

封筒を再びおじい様の方へ突っ返した。

すると彼は小馬鹿にしたように嘲笑った。

「これでは、少なかったかな。
君が望む金額を提示してくれたのならば、それで手を打ちましょう」



途端に、この人の下で育てられた西城さんを不憫に思った。

人の気持ちも何もかも、お金でどうにかなると思っているんだ。そんな風に育てられたら、西城さんがあんな捻くれた性格になるのも理解出来たわ。

寧ろこんな環境下でおいて、どうしてあんな優しい人になったのか不思議な程。

ふと、いつか彼が話していたおばあ様の事を思い出した。 つまりはこの男の妻だった人。

彼の記憶の中で、彼を心から大切に想う人がいて良かった。なりたい物になれと言ってくれる人が良かった。心からそう思った。




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