【完】淡い雪 キミと僕と
「お金を幾ら詰まれようが、わたしの気持ちは変わりません。
変わるとするのならば、彼の方から離れて行った時でしょう。
それにさっきこれから大輝さんより良い人に会えると言ってましたけれど、今のわたしもこれからもわたしにも大輝さん以上の人は現れると思ってません。
はっきりと言っておきます。わたしは大輝さんと別れる気はありません。
これ以上話し合っても平行線なのは目に見えています。なので、わたしは失礼させて頂きます」
がたりと椅子を引くと、がたがたと足が震えているのが分かった。
ここまで啖呵を切って置いて、笑えてしまう物だ。
けれど、わたしは強くなる。そう決めた。自分だけは自分の人生を見捨てたりしない。もう自分の気持ちを誤魔化したり見捨てたりは決してしないと。
西城さんがわたしを選んでくれたから、そう誓ったんだ。
失礼します、と深く頭を下げて室内から出て行こうとすると、引き止められた。
振り返った彼はもう笑ってはいなかった。鋭い眼光をこちらへ向けたまま、くいっと茶色い眼鏡を上げる。
「良家のお嬢さんとの縁談よりも君が大輝と結婚する事で大輝に得る物があるとでも?」
まだ足は震えていた。そこで踏みとどまり、立っているのが精いっぱいだった。けれどキッと睨み返し声を振り絞った。