【完】淡い雪 キミと僕と
「わたしが、誰よりも彼を幸せに出来ます」
それは面白い。何も生産性のない物だ。と彼が声を高らかに笑い上げた。
どうやって帰って来たかは余り記憶にない。
携帯には西城さんからの着信が数件入っていた。
電車に飛び乗った時も、まだ全身が震えていた。
…怖かった。あの視線も…言葉も声も、存在の全てが怖かった。 けれど不思議と自分の言った言葉に何一つ後悔はしていない。
彼に初めて抱かれ、それを無かった事にして自分の気持ちを隠そうとした時の方が、ずっと苦しかった。
それでももしも彼との結婚を認めてもらえず、将来的に無理やり別れさせられそうになったとしたらどうしようか。
西城さんの言っていた駆け落ちとやらにでも手を出してみようか。それも悪くはない。
西城グループと言った肩書を失くしてしまったとして、彼を嫌いになる理由なんて見当たらない。
気持ちは落ち込んでいた。そりゃああの圧倒的な威圧感の中で、手切れ金まで出されれば。けれど不思議と気分はそこまで落ち込んではいなかった。
それでも余計な思考は回ってしまうもので、おじい様の言う通りわたしと結婚する事で彼が得るものはゼロかもしれない。
けれど、ゼロからイチを作り出す事はこんなわたしだって出来るはず。
この愛を貫くためにわたしはもっと強くならなきゃいけないだろう。