【完】淡い雪 キミと僕と
雪は俺たちより早足で夕ご飯を済ませ、テーブルの横でジーっとこちらを見ている。
おい、食後だと言うのに既にちゅーるを求めていると言うのか?…猫は三度の飯よりちゅーるが好きだ。それにしても子猫の頃から考えると見違えるほど立派な猫になったもんだ。
レッドタビーという珍しい模様も実に美しい。
「いまいちね…」
美麗は目の前の野菜炒めを口に運び、言った。
まぁ野菜を炒めるだけの簡単料理で何故こんなにべちゃべちゃになるかと疑問は残るが、それでも俺は美麗の料理が好きだ。
「そんな事はない。しっとりとしていて旨い」
「西城さんは何でも美味しいって言うから。ほんっと…いつまで経っても料理も上達しないなんてわたしは役立たずよ…」
「何を言っている。俺は君が一生懸命作ってくれる料理は、美麗ママの料理より旨いと思っている」
美麗だって仕事をしている。けれど一緒に暮らし始めて毎日のように夕ご飯を作り
その上、軽くだが朝ごはんも作ってくれて、お弁当だって持たせてくれる。
3食キチンと食べる習慣はなかった。けれど美麗がうるさいから3食きちんとご飯を食べるようになったら、以前より体調が良い気がするんだ。
大丈夫。君は十分役に立っている。
「西城さんの作ってくれる料理のが美味しいのよ」
「ならば調理は交代制にしよう。 俺は料理が嫌いではない。
お弁当にも挑戦したいと思っている」
そう言えば、美麗はプハッと吹き出した。 屈託なく笑うのを見るのは久しぶりか。それ程近頃の彼女の様子はおかしいのだ。