【完】淡い雪 キミと僕と
駐車場に車を止めそこから降りても、美麗はあっちこっちに目を配り、偉く感心していたものだ。
「何人住めるのよ」は彼女の言葉。確かに…。この家は持て余しすぎている。父は今は頻繁に帰って来ているかは知らなかった。母は入院している時はいない。
昔ながらの西城家に仕えていた初老のお手伝いさんがただひとりいるだけ。大きな屋敷にそれは余りにも寂しすぎるだろう。
「大輝坊ちゃん、お久しぶりですねぇ」
出迎えてくれたのは、幼き頃から西城家でお手伝いをしてくれている玄さんだ。
恐らくは70を超える。それでもバリバリ元気で、掃除やら料理やらは全て彼に任せているのだろう。
勿論俺が産まれた時から知ってる人で、気心の知れている関係だ。皺皺になった顔を綻ばせて、玄さんが美麗を見つめる。
「今日は、大輝坊ちゃんが女性を連れてくると聞いて…」
「あぁ、山岡美麗さんだ」
「山岡美麗です。よろしくお願いします」
ぺこりと頭を下げる美麗に対し、玄さんはとても柔らかい笑みを向ける。
「こちらでお手伝いをしております、玄と申します。
いやぁーそれにしても美しい女性だ。さすがは大輝坊ちゃんですね」
「まぁな。それよりふたりはいるか?」
「えぇ、母屋の方でお待ちになってらっしゃいます。
最近は奥様も元気そうで、旦那様も仕事が忙しいながらも毎日帰ってきてくださるので」
「へぇ、そうなのか」