【完】淡い雪 キミと僕と

「初めまして、大輝の父です。いつも大輝がお世話になっております。」

父が挨拶をしたかと思えば、隣にいた母もゆっくりと立ち上がり、小さく笑みを作り美麗をジーっと見つめた。

余計な事は言うなよ?!母に無言で圧をかけた。

「あら、大輝ったら面食いなのね。可愛らしいお嬢さん…。
初めまして、大輝の母です。今日は来てくれてありがとうございます…」

偉く拍子抜けをした。

母の顔色はとても良さそうだった。機嫌も良さげで、美麗と俺へソファーへ座れと促す。

俺の事に関しては不機嫌な母親だった。今日も美麗に嫌味のひとつを投げかけるか、しまいには顔を出さない事態だって想定はしていた。

けれど美麗を見つめ、ニコニコと笑っている。挙動不審なのはよっぽど美麗の方だっただろう。

「あの、これを…クッキーなんですが…よろしかったら皆さんで」

「あら、ソルトベリーのクッキーだわ。お母さん大好きなの。ありがとうね、気を遣ってもらっちゃって、皆さんで頂きましょう。
美麗さん、座って座って」

「は、はいッでは失礼致しますッ!」

だから…挙動不審だと…。

「実はね、美麗さんが来ると聞いてわたしパウンドケーキを焼いたの。お好きかしら?」

「大好きですッ。良い匂いが廊下中に広がってました。わざわざありがとうございます!」

「ウフフ~。味の保証は出来ないんだけどね~。
今持ってきますねぇ~。美麗さんは珈琲とお紅茶どちらがいいかしら?」


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