【完】淡い雪 キミと僕と
「悪いけれど、タイプじゃあないんだ」
会う事はなかった。
会ってうっかりその気にでもさせてしまったら大変だから。
だからといって、メールで関係を断ち切るのは余りにも失礼すぎると思ったから直接電話で告げた。
別に告白をされた訳ではない。好きだとも言われていない。実際美麗は俺の事を本気で好きになるわけがなかったし、俺の背後に見え隠れするステータスに惹かれていただけなのだから。
あっそうですか、とか直ぐには食い下がらなかった。
意外に気が強い。花のように笑う癖に、今にも泣き出しそうに、眉と目尻を下げて弱々しく笑うくせに。
「どういった女性がタイプで?」
聞かれたから正直に、何人もの男と付き合える人よりも、たった1人をずっと想えるような女性がタイプ、だと言った。
これは、紛れもない本心であった。
女には、とっくに幻滅していた。
どこに行っても、同じような顔をして同じ笑顔を作って、同じようなブランド物を持って、同じような服を着る。
俺の周りには入れ替えられても分からないほど、そんな女性たちがうじゃうじゃ溢れていた。
卑しい、というのだろうか。
けれど人並みに性欲はあるもんで、言い寄ってくる女たちは抱いた。セフレだって何人かいた。相手が本気になりそうならば、速攻切った。
違うんだ。上辺だけを取り繕った、そういう問題ではないんだ。
女に淑女であれとは言わん。そういう事じゃあないんだ。