【完】淡い雪 キミと僕と
「では、紅茶でッ!というかわたしお手伝いをしますッ!」
「いいの、いいの~。美麗さんは座ってて~。
それにしてもしっかりとなさったお嬢さんねぇ~。ね、お父さん」
「そうだな。
美麗さん妻の言うようにゆっくりと座っていて下さい。
ほら、大輝も」
「あぁ………」
母はこんな人だったろうか。どちらかと言えばお嬢様育ちでぼんやりとした人だとは思ってはいたが。
こんな美麗を快く迎えるような人だっただろうか。…薬が効いているのか…。まるで病院で会った母と、幼き頃に見ていた母とは別人のようだった。
そしてまた父も、仕事中に見せる飄々とした姿ではなく、じっくり腰を据えて優し気な瞳で美麗を見つめるのだ。
「美麗さんのお話は少しだけ大輝から聞いております」
「は、はいッ!」
「アハハ、そんな緊張しなくとも大丈夫ですよ。
美麗さんの勤めている会社のピッキーというお菓子を僕は大好きでね、1日一箱は食べるんですよ」
「そうなんですかッ?!西城グループの社長様が自社の商品を食べてくださっているなんてッ!」
だから…アンタところどころ日本語がおかしいんだよ。
つーか親父がお菓子を食べるなんて初耳だが?
「昔ね、ピッキーにはムースバージョンがあったんだよ」
「あ、それ分かります。わたしも小さな頃食べた記憶があります」
「あれが1番好きだったんだが、いつの間にか生産終了してしまったみたいでね。
今はもっぱら苺ピッキーばかり食べているよ」
「苺ピッキー美味しいですよねッ!わたしも大好きです。
意外に甘党なんですね。大輝さんは甘い物全然食べないから」