【完】淡い雪 キミと僕と

「ああ、私はお菓子は昔から大好きでね。
若い女性から人気のパンケーキやパフェなんかも大好きだよ。」

「そうなんですかぁ~?!わたしも大好きですッ!表参道にある」

「「カヌレ」」  父と美麗の言葉がぴったしとはもり、ふたりは顔を見合わせて笑った。

「美味しいですよね?」

「あぁ、あそこのパンケーキは最高だ。」

何を楽し気にスイーツの話なんかしてるって言うんだ。父がこんな優しい眼差しを人に向けるなんて、知らなかった。

そこに母がやってきた。

母の手にはお茶と、ドライフルーツが入ったパウンドケーキ。

微笑みながら、それを切り分ける。

「カヌレのパンケーキも美味しいですが、うちのが作るケーキも中々ですよ、美麗さん」

「あらやだ、あなたったら…。お店と比べたら恥ずかしいの。
でも良かったら食べてくださる?」

「えぇ!いただきますッ。とっても美味しそう!」

意外な程に和やかな雰囲気だった。

あの母が、嬉しそうに笑っている。そしてまた父も穏やかに笑う。家族らしい事なんてした記憶はない。

けれど、父と母はいつの間にこんな仲良くなっていたんだろう。病院でだって恨み言のひとつも言っていた癖に。

美麗も美麗で両親と楽しそうに話していて、すっかりと緊張はほぐれたようだ。いつもらしい美麗が戻ってきた。

「最近は体調も良くってね。ガーデニングにハマっているの」

「そうなんですか?わたしの母もガーデニングが好きで…。ここのお屋敷みたいに大きな庭ではないんですけれど…
わたしも母の影響で小さな頃からお花は好きで」


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