【完】淡い雪 キミと僕と
「そうなの?じゃあ少しだけお外に出てみる?」
「いいんですか?」
「今は冬だから余り綺麗に咲いていないけれど、温室の方で少し育てているお花があるの」
母と美麗が気が合うとは想像もしていなかった。
けれど美麗は母の作る甘ったるいだけのパウンドケーキを美味しいと何度も言って
母も母で上機嫌で彼女に話を掛ける。 ガーデニングをするなんて、俺は知らない。 けれどもその話で盛り上がり、ふたりで庭の方へ行ってしまった。
ぽつりと置いてきぼりにされて、居心地の悪いリビングで父とふたり取り残される形になってしまう。
珈琲を口に含み、父は一息ついた。
「良いお嬢さんではないか」
「えぇ、まぁ…」
「お母さんとも話が合いそうで安心した。
あれも今日緊張していた。昨夜は余り眠れなかったようでな。
大輝と彼女にケーキを作るんだって夜から張り切っていて」
「意外でしたけど…ね」
「お母さんもお母さんなりに色々と考えている。お前には苦労をかけたと思っているが、あの人はあの人なりに大輝の事を思ってはいる」
「そう…でしょうか…」
「それよりも美麗さんの事は安心したよ。
もう家には来てくれないんじゃないかって思っていたところだったから。
私達には会いたくないんじゃあって」
「え?」
父の言葉に、一瞬眉をしかめる。
すると父も同じ顔をした。