【完】淡い雪 キミと僕と
西城さんのお母さんは驚く程細い人だった。
お花に手を伸ばす手首は折れそうで、手の甲には青々とした血管が浮き出ていた。
目を細め微笑む様はとても優し気で、幼い子供に手を上げるような人にはどうしても思えなかった。
クリーム色のカーディガンを羽織る、身体の弱いお母さん。笑うと目が線になる。その瞳を見て、あぁ西城さんはどちらかと言えばお母さんに似ているんだ、と思った。
決して大きくはない瞳。奥二重だったけれど、どこか慈悲に満ち溢れているその瞳を見て思った。
「このお花はなんていう名前なんですか?綺麗な淡いピンクですね」
茶色の鉢の中、淡いピンクの小さな花がびっしりと顔を覗かせる。太陽の光りをたっぷりと浴びて、上を向いているようにも見える。
彼女は首を少しだけ傾げ「分からないわ」と微笑んだ。
「アハハ、わたしってばガーデニングは好きなんだけど、お花の知識ってのはさっぱりで。
今度玄さんに聞いておきます」
少し天然なのだろうか?そこも西城さんによく似ていると思う。
木で出来た棚が段差になっており、そこに様々な花や観葉植物が並ぶ。
お母さんは嬉しそうに鼻歌を歌いながら、それに水をやっている。わたしの瞳に映る彼のお父さんもお母さんも、とても良い人。…そうとしか思えないんだけど。
ぴたりと手を止めて、彼女がこちらを見やる。
その瞳はやはり西城さんによく似ていると思う。