【完】淡い雪 キミと僕と
「ちょっと!前を見て運転してよ!わたしが事故にあって死んだらどうしてくれると言うのよ?!
それに西城さんが思っているような事は決して思った事がないわ。
わたしは何があってもあなたと別れるつもりなんかないもの。あの恐ろしいおじい様が来たとしても何度でも追い払ってやるわよッ。
今度職場になんか来たら警察に通報しちゃうんだからッ!か弱い娘にあんな威圧的な態度を取って、終いにはお金で解決しようとするなんて最低な人間よッ!
だから、わたしはそんな最低な人間に屈するつもりはないって事!」
急ブレーキをかけて、いきなり車が停車する。
その反動で心臓が少し浮いた気がするわよッ?!
事故で死ぬのも嫌だけど、ショック死するのはもっと嫌だわ!
「だから、危ないっつってんじゃないの!殺す気?!」
「美麗ッ…」
車を停めた彼が、わたしを抱きしめる。 不思議。さっきまで彼のおじい様を思い出して震えていた筈なのに、彼の方が震えているように感じるなんて。
「何よ……」
「俺…絶対今回は美麗に呆れられたって思った…。
あんな祖父がいて、恥ずかしい…。もう西城グループに関わるのなんてウンザリだって…アンタが離れていったらどうしようかと…。
俺が西城家になんか産まれてしまったから…」
「何を馬鹿な事を言っているの?
わたしはあなたから離れるつもりはないわ。あなたがわたしから離れない限り」
泣きそうな顔をしていた。人の事を言えたものか。
子供のように、眉毛を下げて今にも泣きそうな顔をする彼を…守りたいと思い始めたのはいつからだったんだろう。