【完】淡い雪 キミと僕と
「大輝が北海道に出張に行くと聞いたのだが?」
「えぇ、2月末から1か月ほど。夢かぐらの西門さんの下でお世話になろうと思っています。
先方の了承は得ております」
窓の外を見ていた筈がくるりとこちらを振り返り、眼鏡の端をくいっと上げて納得のいかない顔をしていた。
「何も話しを聞いていない。私は了承していない。
何を今更あんな寂れた旅館に行く必要がある?それよりもお前にはもっとすべき事があるんじゃないか?西城グループの事を思えば」
「社長からの了承は得ております。西城グループの事を思えば、僕は今西門さんの下で勉強する事は多々あるように思えますが?
僕は確かにあなたや父から机の上で経営の勉強は教わってきたと思っています。
けれど実際の現場を見てはこなかった。次期社長として、根本的な勉強を怠ってきた僕には西門さんの下で勉強する事は無駄だとは思えませんが?」
フンッと鼻を鳴らした。
実に下らない、と言った笑みを向ける。
「現場などは現場の人間に任せておけば良い」
「そういうのは僕は嫌なのだと言っているんです。
僕がこの先西城グループを背負っていくのならば、ある程度現場の事を理解しておかなくてはいけません。
上にばかりいては見えぬ景色もきっとあるはずです」
「何を生意気をいっておる。それに現場で働きたいと言うのならば、何も西門さんの下でなくても良いではないか」
「西城グループには、僕の尊敬する経営者はおりません。」