【完】淡い雪 キミと僕と
それは祖父と共に父をも含まれるのだが。それには彼自身も納得しているだろう。だからこそ、西門さんの下で勉強する事を許可してくれたのだと思う。
「僕はホテルに泊まるお客さんの気持ちに寄り添え合えるような経営者になりたいと思いました。
その為にはホテル業界について基礎から学ばないとと思っています。西城グループで学べない事を夢かぐらで学べると思っています。
夢かぐらで学んだ事を西城グループに持って帰って来ると言う事は、そんなにいけない事でしょうか?」
眼鏡の奥の眼光が激しく光ったと思えば、祖父は片手で机を大きく叩いた。
父は何も言わず、ソファーに座ったまま沈黙を貫いていた。
「いけないいけなくないの問題ではない。そんな必要はないのだッ!何故お前は私の思った通りに動かない?!黙って言う事を聞いていればいいのだ!
西城グループの未来を想えば、お前にはしなくてはならない事が沢山あるッ…。
それだと言うのにお前まで祐樹のような身勝手な事を言い出し、勝手な行動ばかり取って。
夢かぐらに行きたいばかりか…」
「美麗の事ですか?」
美麗の名前を出すと、祖父が一瞬怯んだのが分かった。 けれど直ぐに口元を上げて余裕の笑みを作って見せた。
「勝手な事ばかりしてくれたみたいですね…。
お金まで積んで、僕と別れさせようとしたり、勝手に彼女の素性を調べ上げ、人の気持ちを全く考えていないですね?
いや、考えていたとしたらあんな行動は取れないでしょう」