【完】淡い雪 キミと僕と
「私はあくまでも西城家に相応しい女性か調べ上げたまでだ。
全くお前と来たら、たかだかあんな女如きにのぼせおって、あんな小娘どこにでもいる女ではないか。
お前は私の決めた女性と黙って結婚しておればいいのだ。所詮お前など…」
「どうせ僕など、会社の駒に過ぎないからですか?」
その言葉を言うと、祖父はまた眉をひそめた。否定は出来ないだろう。彼にとって自分は孫である前に、大切な会社の駒である事は間違いない。
それのどこが悪いのだ。と何ひとつ悪びれる事なく、答えるだろう。
「僕はあなたの駒だろうが会社の駒だろうが、何を思われても構いません。
けれど美麗を傷つけるのは別です。それだけはあなたがたとえ僕の祖父であろうと許しません。
僕は彼女と別れるつもりは一切ありませんから」
「お前はッ……まだそんな事を!いい加減自分の立場をわきまえろッ!
山岡美麗など西城グループの何の役にも立ちはしないッ。そんな役立たずを西城家に迎え入れる事は決して許さん!
お前がそこまで馬鹿だとは思わなかった。…お前は祐樹とは違うと思っていたのに
あんなどこにでもいる小娘のどこがいい?!西城グループの未来を思うのならば、あんな娘と一緒にいたいなどと言えるわけないだろう!!」
祖父の息が荒くなり、怒声は室内に響き渡った。
その時だった、今まで沈黙を貫き通した父がソファーからゆっくりと立ち上がる。
そして背筋を伸ばし、祖父の前に向き直り俺へとその背中を見せた。 父の背中が大きいなどと今まで一度だって思った事はない。