【完】淡い雪 キミと僕と
おい、いい加減にしろこのクソジジイ。それ以上美麗の事を侮辱するような言葉を吐くのならば
そう、右拳が出かかった時だった…。
「早くくたばれ老いぼれ」
父の冷たい一言が室内に響き、ぴたりと喧騒は止んだ。
祖父の顔が更に真っ赤に染まりかかった。
「お前ッ!」
「お母さんの葬儀の夜に女の家に行っていたあんたに美麗さんや大輝の事をとやかく言う資格はない。
これからの西城グループは社長である私が背負う。その私が決めた事に口は挟ませない。
もう私は大輝についてはあなたに何ひとつ言及する事を許さない。
あなたももう良い歳だ。そろそろ隠居を考えても良い。今までお疲れ様でした」
父が大きく見えたのと同時に、祖父がぐっと小さく見えた。震えた拳を握り締めたまま、彼はぺたりと椅子に座り込んだ。
’大輝は何になってもいい’
ふと、幼き頃おばあちゃんに言われた言葉を思い返していた。
俺は結局サッカー選手にも、パイロットにもなれなかった。けれど、もっと大切な物を手にする事が出来た。