【完】淡い雪 キミと僕と
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話は1年ほど前に遡る。


わたし、山岡美麗は俗にいう、港区女子と言われる類の人間であった。


数年前から「港区女子」という言葉をよく耳にする機会はなかっただろうか。
港区界隈で遊び回り、高級ブランド、お金持ちの男性と夜な夜なパーティー。食事会。

キラキラとした生活をインスタで披露して、その実態は上辺だけの友人とマウントごっこ。

六本木、麻布、乃木坂、赤坂。
キラキラとした女子に紛れて、わたしもひっそりとそこで息をしていた。
ハイスペックな男性を探して、自分磨きに勤しむ。
ハイブランドの物を身にまとって、毎夜毎夜蝶のように夜の街でひらひらと舞っていた。


女は顔が全て。
幼き頃からそう思っていた。

そしてわたしは、誰もが認めるほど可愛くて美人でスタイルだって良い。
それにくわえて学生時代から勉強も中々出来たし、スポーツも万能。
大学生の時はミスキャンパスに選ばれた経歴だって持つ。


美麗ちゃんって非の打ちどころがないよね、とよく友人にも言われたが、そこも謙虚な姿勢は忘れずに
だって自分の中ではコンプレックスは山ほどあったのだから。

パパは会社の社長。そう言えば聞こえが良いかもしれないけれど、小さな建築会社のしがない社長。しかも成り上がり。

元々ヤンキーだった父親と、レディースの頭をはっていたような母親の間に生まれたのがこのわたしだ。

中学からはお嬢様学校に通わせてもらったけれど、そこは元々選ばれし本物のお嬢様たちが通う学校で、かなり居心地が悪かったのを覚えている。
偽物と本物。それとなく分かってしまう物だ。普段の立ち振る舞いなどから滲み出てしまう物なのだ。



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