【完】淡い雪 キミと僕と
段ボールをそっと覗くと、今起きたであろう子猫が暗がりの中目を光らせてこちらを見る。
口を大きく開けて鳴くと思った瞬間、鼻に人差し指をあてて「シー」と言ったら、猫はまるで言葉を理解したかのようにこちらをジーっと見つめてきた。
こちらに来たそうに段ボールをカリカリと爪で研ぐから、美麗が起きてはいかんと思い、子猫を段ボールから取り出し、お腹の上に乗せた。
暗がりの室内の中で、子猫は元気いっぱい俺の腹の上で動き回る。
玩具じゃねーの?ってくらい小さいのだが、必死に必死に俺の指で遊ぶ。
「可愛いなぁー…お前は…」
そう言うと、黒い目をした猫は不思議な顔をして動きを止めた。
そして嬉しそうに「みゃあ」と短く鳴く。
やっぱり言葉を理解しているとしか思えない。
天才猫だったのか。だって今聴こえたぞ’さいじょーさん、ありがとうね’って。
まぁ幻聴だが。
腹の上に乗せて、ミルクをやって暫く立ったら子猫は眠くなってしまったらしく腹の上で幸せそうな顔をして目を閉じた。
その表情からも’しあわせですぅ~’と心が読み取れる。俺はエスパーにでもなってしまったのだろうか。
そんな事を考えていたら、ソファーの上でいつの間にか眠りに落ちていた。ひとりで眠るベッドよりも、女と共にする時よりも、安らかな眠りだった、と思う。