【完】淡い雪 キミと僕と
俺の横で琴音猫を抱いた琴子がニヤッと笑みを浮かべる。そして琴子に抱かれた琴音猫は、呆れたように吊り上がった瞳をこちらへ向ける。
…ムカつく事ばかりだなッ!
「何を笑っている?!」
「いや、大輝こそ何そんなに怒ってるのよ。
男の嫉妬程みっともない物はないものだよ~?」
「俺が、’誰’に’何’の嫉妬をしているという?!」
琴子へ向きなおったら、琴音猫が般若のような顔をし、シャーとこちらへ威嚇した。…このクソ生意気な猫が。お前はいつか猫鍋にしてやるからな。
「ハル~、あたしにも雪を抱かせて~」
「いいよ~。それにしても琴音は雪は怖くないんだなー」
何が’いいよ~’だぁ?!雪は物ではない!
琴音猫は美麗にも威嚇をしたが、雪にはしなかった。仲良くもしなかったが、琴音猫へと近寄って挨拶をする雪を無視するようにツンと背を向けた。
けれど雪は構って欲しそうで、琴音猫の前でも愛嬌を振りまく。
それでも無視を決め込んで、今は自分の体をくるりと曲げて優雅にブラッシングをしている。おい!毛が飛ぶぞ?!雪は短毛種だから良いけど、お前は長毛種。そこは遠慮しておけ。
どかどかと足音を立てて、3人の間に割って入る。
その音にびっくりしたのか琴音猫が俺の足へ猫パンチを喰らわす。…小賢しい猫だ…。
井上晴人のお腹の上から雪を奪還すると、雪は嬉しそうに俺へ「ミャー」と鳴き声を上げた。