【完】淡い雪 キミと僕と

「ちょっとー!何すんのッ!井上さんのお腹の上で寛いでいるって言うのに~」

はぁ?!
何を美麗アンタまでぶりっ子をしている。井上晴人に正に猫撫で声を出して愛想を振りまくなど、それじゃあ雪と同じだろう?
…アンタは俺の物だ。勿論雪も。絶対に井上晴人に等渡さない。

「お前に一言言っておく!」

「は、はいッ。何でしょうか…?」

男の癖にビクビクして何とも情けない奴だ。背ばっかり大きくて、頼りがいもない。…女共が何故お前のような軟弱な男を好きか理解に苦しむ。

「雪も美麗も俺の物だ。絶対に手を出すな!」

「だからアンタって何でそうなるの?!井上さん何もしてないじゃない!被害妄想も大概にしてよッ!」

「うるさい!こいつに対しぶりっ子して猫撫で声を出していた女が言うな!
まさかアンタまだこいつの事が好きなんじゃないか?!」

「ばっかじゃないの?!」

俺たちの喧嘩などお構いなしと言った感じで

俺の手の中からすり抜けた雪を、琴子と井上晴人は構っている。雪も嬉しそうに彼らと一緒に遊ぶ。 その横で我関せずといった感じで琴音猫が丸くなる。

雪も美麗も薄情だ。

俺がどれだけお前たちを好きかなんて絶対に理解していないだろう。こうやってヤキモチを妬いてしまう程、大切に想っているなんて理解していないだろう。

…いつだって不安なんだよ。この手の中に手に入れたとしても、いつか離れて行ってしまうかもしれないって。そんな俺の不安も理解せずに、アンタも雪も薄情者だ。


< 608 / 614 >

この作品をシェア

pagetop