【完】淡い雪 キミと僕と

「おい」

小さいくせに温けぇ…。

「おいって」

指先に伝わるまだ生え揃ってねぇ毛。柔らけぇ…。

「おいってば!!!」

耳元をつんざくような声に、目をパチッと開ける。

上から見下ろして、明らかに怒りの表情を浮かべた美麗。

けれど胸の中で眠っていた猫が「みゃあ」と鳴き声を上げたら、段々と表情は緩くなっていって、終いにゃーデレデレになっていく。

その変化、中々面白いぞ。 

君の本当に嬉しそうに笑う顔や、小さな生き物を優しく見つめる笑顔は、結構良い。

花のような笑顔よりも、泣き出しそうに眉や目尻を下げて微笑む、あの笑顔よりかはよっぽど。

「ふぁ~おはよう~」

「何をしている」

既に美麗は化粧を終えていた。結構な時間を眠ってしまったようだ。俺らしくもない。

「おぉ~今日はお化粧を既になさっているのですね~お綺麗ですよぉ~美麗ちゃん~」

「アンタのその喋り方が大嫌い」

「褒めてるのに」

「何よ、夜中に女の子の家に忍び込んできちゃって、失礼ったらないよ。
わたしの美しい寝顔に欲情でもしなかったでしょうね?!」

「口開けて寝てたよ」

「嘘だ!」

「よだれも流してたよ」

「絶対嘘!」

「ぐああああああと猫もびっくりするくらいのいびきも掻いていたな」

「いやああああああああ………」

そこまで言ったら、その場に崩れ落ちていくように床に突っ伏して落胆した。

こいつをからかうのは中々楽しい。花のように笑ってぶりっこをしている山岡美麗よりはずっと良い。


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