【完】淡い雪 キミと僕と
「まぁ、そう怒るな。今日はアンタの為に飯も買ってきた」
「え?気が利くじゃん。後1万ちょうだいね」
抜かりない奴。
財布の中から1万を取り出して、美麗へ渡すとすぐにそれを財布にしまった。…別に取り上げやしねぇよ。
友理奈の家からここへ向かう途中、24時間やっている牛丼屋に立ち寄った。
牛丼屋でテイクアウトするなんて初めての経験だったが、まさか食券を買うシステムだとは驚いた。
それをテーブルの上に置くと、美麗は明らかに嫌そうに顔をしかめた。
「牛丼とか…」
「あれ?嫌いだったか?」
「大好きだけど」
「あぁ、それは良かった。きちんと君の分も買ってあるから食べてから出社しなさい」
「何、その口調。
つーかいくら好きでも朝から牛丼なんて気分にならないわよ」
まーた、健康に悪そうな美容ドリンクを手にしてる。
俺も別に食欲旺盛ってタイプじゃねぇけど、それはない。
「朝は少しくらい食べたほうがいい。ほら」
袋から牛丼を取り出して、美麗へ差し出すと再び変な顔をした。
眉も目も口も四方八方に歪ませて、顔をしかめる。’おお、お前は顔芸も出来るのか。’なんて言ったらヒステリックに更に怒りそうなので、今日は止めておく。
「…何でギガ盛りなのよ…」
不服そうにそう言った。
大は小を兼ねると言うではないか。こちらは親切のつもりだったのだが?
「そして、何でアンタが小盛りなのよ」
どうやら彼女は、自分がギガ盛りに対し俺が小盛りなのが気にくわないらしい。