【完】淡い雪 キミと僕と
「俺はあまり、食に興味がないもんでね」

「何それ、わたしがまるで食に興味がありありの卑しい女みたいじゃないのよ!」

「…交換するか?」

「しないけど!実はめっちゃーお腹空いてるし!食いますけども!」

「ならば初めから素直に受け取っておけばいいものの」

「うるさいなぁー!昨日の夜はサラダしか食ってねぇから腹が減ってんだよ!」

「サラダだけ?!体調でも悪いのか?」

「アンタ馬鹿じゃん?夜は糖質制限してんの。最近太り気味だから!ほんとは朝いっぱい食べるのがいいんだろうけど、眠ったら食欲もなくなってちょうどいいと思ったのに…こんなん目の前に出されたら…食べたくなっちゃうじゃないの…」

美麗は、牛丼ギガ盛を全部食べた。

それはそれは気持ちが良いくらい豪快に食べきり、米粒ひとつも残さなかった。

「意外に大食いなんだな」

「そーなの。しかも食べたら食べた分太っちゃうタイプでさ。
ママが若い頃は細かったんだけど、今じゃあパンパンの子豚みたいになってるから、将来わたしもあんな風になってしまうかもしれないって
だから今から気をつけてんの。パパはママは太っていても可愛いよ~なんて言うから」

美麗のお母さん。子豚。子豚に太っていても可愛いよぉと言うお父さん。想像しただけでも楽しそうな家族だ。

そしてちょっぴりそんな家庭で育った美麗が羨ましかった。

「それに偉いな。米粒ひとつ残さないで」

褒めたつもりなのに、何故か機嫌を損ねたらしく、美麗はギロリとこちらを睨みつけた。

「米粒一粒も残さずいやしい乞食めって思ったんでしょう?!」


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