【完】淡い雪 キミと僕と
どうせならば、温かい作り立てが良いだろう。坊ちゃんには。
まぁお口の肥えてらっしゃる坊ちゃんにホカホカ弁が口に合うとは思いませんが、朝も牛丼買ってきてくれたし。
その場で調理してくれるホカホカ弁を10分程待ち、焼き鯖のお弁当と唐揚げ弁当を買った。
…唐揚げのカロリー…とも思ったけれど、ご飯は少なめにしたからと自分に言い訳をして、ふたつ分のお弁当を買って家路を急ぐ。
わたしは料理を全くしない。
というか出来ない。頑張ってみようともした事があった。けれど卵焼きすら綺麗に巻けない程不器用な自分に気が付いて、それに関しては諦めた。
本来ならば、その場で作った温かい料理を提供したいもんだけど。とここまで思って、西城さんにそこまでしてあげる義理はないと思い出した。大体あの人はわたしの手作り料理なんて望んでいないだろう。気持ち悪いと言われるのがおちだ。
家に着くと、直ぐに電気のチェックをした。
大丈夫。今日は玄関もトイレの電気も消えている。
そして西城さんはソファーに腰をおろし、お腹に猫を乗せて手に持っていた書籍を真剣に見つめていた。帰って来た事にすら気づいていないのだろうか、こちらには全く見向きもせずに手元に視線を落とし続ける。
彼のお腹の上にいた猫の方が真っ先にこちらへ気づき、みゃあと声を上げる。
やっぱり、口角を上げて目を輝かせてこちらを見せる仕草、笑っているようにしか見えないのだが。そんな事を口に出してしまえばまた「妄想だ」と言われてしまうのだろう。