【完】淡い雪 キミと僕と

「結婚は、するの?勿論するわよね。そんなアンタに似つかわしくないファンシーな本まで買っちゃってるんだものね。
ここは、おめでとうと言うべきなのかしら?別にわたしにとっちゃあアンタが結婚しようとしまいが、関係のない事なのだけど
でも、まぁ赤ちゃんはおめでたい事よね。そう考えたら、おめでとう…ね」

パタリと本を閉じた西城さんはじぃっとわたしの瞳を見つめ、何かもの問い言いたげな顔をして口を開く。

「何か大いなる勘違いをしていないか?俺はこいつの名前の話をしているんだ」

お腹に乗った子猫を片手で持ち上げると、また猫は笑ったような顔をしてみゃあみゃあとこちらへ話しかけるように鳴いた。

「猫では、可哀想だと思った。というか不公平だと。
アンタには美麗。俺には大輝という名があるようにただの家畜だとしても、名前くらいはつけてあげた方がいいのではないかと思ったんだ」

「まぁ、確かに。 …てか、家畜って。アンタのがよっぽど酷いけどね」


名前、か。

考えもしなかった。

確かに名前は必要だ。いつまでも猫と呼び続けるのは可哀想だ。

しかしそれはどうなんだ?この猫はいつまで家にいるのだろう。結局はわたしが飼う羽目になるのだろうか。それとも一時期だけ預かる形になるのか。それさえも話し合いはしていない。

いずれは西城さんが飼うつもりか、それともある程度成長したら里親に出すつもりなのだろうか。彼は引き取ってきたが、自分が飼うとは一言も言っていない。

< 70 / 614 >

この作品をシェア

pagetop