【完】淡い雪 キミと僕と

子猫にミルクをあげたら、ありがとうと律義にお礼を言って西城さんはホカホカ弁に手を伸ばす。

いただきますと、両手を合わせ正座をし、綺麗に焼き魚の身をほぐしていく。

こういう所でも、育ちの良さは垣間見えたりするものだ。箸の使い方。食べ方。普段どれ程口が悪く生意気な性格であっても、こういうふとした場面で住む世界が違うのだと痛感してしまう。

そしてちょっぴり卑屈になってしまう自分がどこかにいた。

パパもママも大好きだし、何不自由なく育てられたのに、僻みっぽい自分にはいい加減うんざりする。


ハァー、と小さなため息を落とすと、箸を置いた西城さんがこちらを一瞬見た。

「何だ浮かない顔をして。可愛い顔が台無しだぞ?」

「はぁ?!可愛いとか思ってもいない事がよく言えるもんだわ!」

「いや、アンタは顔はまあまあ可愛い方だ。性格に多少難があるとはいえ」

だから一言多いんだっつーの!

可愛いならば、可愛いで良いじゃないか。それに性格に難があるなんて、アンタに言われなくたって自分でよく理解っている。

「そういえば、今日は金曜日だぞ?」

「そんなの知ってるっての。毎日毎日金曜になるまでどんなに長い1週間を過ごしていると思っているのよ。
わたしはアンタとは違って雇われの身だから自分の自由な時間なんて土日にしかないんだから」

「飲みに出ないのか?港区女子というのは金曜の夜と土曜の夜が勝負じゃないか。
業界人パーティとやらには参加しなくていいのか?」
< 72 / 614 >

この作品をシェア

pagetop