【完】淡い雪 キミと僕と

「桑田さん、ドバイのジェイコブさんからの融資の話はどうなってますか?」

「5億の融資が決まっております」

「それで進めて下さい」


会議室の、長く続くテーブルに重要な役職を持つ役員が30人ほど並べられている。

’経営戦略会議’朝から鬱陶しいたらありやしない。大の大人が集まってパソコンに向き合い、資料を手にして様々な事業について報告をし合う。

年齢50も越える俺よりずっと年上で優秀であろう部長たちが、27歳のたかだか社長令息である自分の顔色をちらちらと窺っている姿は見るに堪えない。

会議には、父の姉の息子たちも参加していた。俺よりは少し年上だが、ギラギラとした鋭い眼差しは虎視眈々と自分の今いるポストを狙っているのではないのか。

それもどうでも良い。座りたくて、ここに座っている訳ではない。生まれついた星の下がたまたまこの場所だっただけだ。




「お前も段々と板についてきたな」

「そうですか?まだまだだと自分では思っています。父の下でもっと勉強しなくては、と。」

「祐樹か…アレはいまいち何を考えているのか、私にも分からん。
しかし大輝、お前は若いころの私によく似ている。お前に任せておけば西城グループも安泰だとは思っている」

「精進します」

「ハッハッ、まぁ肩肘を余り張らんで、もっと気楽にな」


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