【完】淡い雪 キミと僕と
事務的に説明をされて、事務的にプレイをしようとした。
そんなつもりは毛頭なかった。誰かと話をしたくて、自分の事を全く知らない世界に行きたくて
西城大輝ではない、ただの人間として自分を見て欲しくて、今にして思えば、年下の女の子に子供染みた八つ当たりをしてしまったと後悔している。
盛り上げていたつもりだったのか、琴子はかっこいいとか素敵だとか見え透いたお世辞を並べ始めた。お客さんを気分良くさせるのが彼女の仕事なのは分かっていたが、見え透いた嘘にはうんざりして、作られた笑顔には吐き気を催した。
ありとあらゆる侮蔑の言葉を使い、彼女を罵った。商売女の癖に、と。完璧なる八つ当たりだ。
自分がどれだけ思い上がっていたのか、軽率な言葉を使えば使う程、彼女は俺へと軽蔑の眼差しを向けた。それは呆れかえっているようにも見えた。
「お前!俺は今をときめく西城グループの次期社長の西城大輝だぞ?!」
今にして思えば、かなり痛い言葉だと思っている。
西城大輝という人間から逃げたくて、隠してもらいたくて仕方がなかったのに、自らフルネームを名乗ってしまうなどと。
今をときめく、などなんて寒い言葉なのだろう。結局は西城グループをバックにし、自分を大きく見せたがる、小さい小さい男なのだ。
琴子は直ぐに「あぁ!」と濃いメイクをしてる目元を瞬かせ「雑誌で見たことがある」と言った。彼女が目をぱちくりさせるたびに恐ろしく長い付け睫毛がバサバサと揺れる。
つーかメイク怖ぇーよ。
港区で言えば、ランク外のC級の女だとは思った。
それよりも驚きは、どう見ても馬鹿そうなこの女が、経済紙などを読むのだという事実だったが。
しかし彼女は俺の正体を明かしても、特別扱いなどはしたりしなかった。あくまでもデリヘル嬢としての仕事を全うしようとしていた。
その態度に、更にムカついた。