【完】淡い雪 キミと僕と
「ちょ、服くらい着てよッ」
「何だ、照れてるのか?意外にうぶな所があるのな」
「きしょッ!女性の一人暮らしの家に来といて裸でうろちょろされるのは目障りって言ってるのよ」
「女性?」
「女の’子’をつけるとアンタに否定されるから女性と言ったまでだけど。
それよりこの美味しそうな物は一体何なのかしら?」
さっきまでアホ面で見ていたピザを指さした。
「あぁ、お腹が空いてな。良かったら一緒に食べよう」
「はぁ?!アンタ馬鹿?!こんな時間にこんな高カロリーな物食べる訳ないじゃん」
「そう言うと思って、サラダも買っておいた。
糖質を取る前に野菜を食べると太りずらいんだ」
「そんなの知ってるわよ!当然の情報をさも自分だけが知ってるって顔をして言うのは止めて!」
ほら、予想通りの行動を取ってくれるんだ。
思わずその日の疲れが吹っ飛んで、頬が緩んでいくのが自分でも分かった。
世界で1番苦手な女であっても、こいつの事を心から嫌いな訳ではないんだ。
「何よ……
何笑ってんの?すごい不気味、つーか怖い。
真夏なのに、雪でも降るのかしら…」
心から面白くて笑っているのに、こいつは訝し気な顔をしてこちらを見た。
全く失礼な女だ。
無視をして、いただきますと手を合わせて美味しそうなピザに手を伸ばす。冷めても美味しいと評判の店だ。さすが一流イタリアンシェフが作っただけある。
だが、美麗と食べたチェーン店の牛丼も中々旨かったし、ホカホカ弁も悪くはなかった。
再びアホ面をして、美麗はピザを頬張る俺を見上げる。